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かというと、早くにパートナーシップを作ってまだ子供がいない時、それに子供ができて1〜2年くらいの間、つまり家族に変化が起きた時ですね。そのあとというのは、それほど多くはありません。
樋口 日本ではカップルになったらまず法律的に結婚してしまう。それは一方では、離婚がしやすいという背景があるからではないかと私は思っています。前回の対談で、日本の結婚制度は非常に離婚しやすい制度であるという話が出ました。そういうことだったら、スウェーデンでは、子供がいたら6か月間の考慮期間を持つという規制があるだけで、もっと離婚しやすい国です。離婚に際しての子供の扶養についてはどうなっていますか。父親が逃げてしまうなんてことはありませんか。
訓覇 スウェーデンでは、子供を扶養する親の責任が非常にはっきりしています。離婚しても、親権は男と女両方にあります。成人の男と女が別れるのはしょうがないとしても、親と子の関係は変わらないということです。離婚した親が再婚してもしなくても、生涯親子の関係は変わらないし、子供が大人になるまで、一緒に住んでいないほうの親は養育費を払います。この親が養育費を払えない場合は、子供を不幸にすることのないように社会保険局が代わって払います。親子の関係を保ち続けさせるシステムがしっかりしていますから、逆に、離婚するかもしれないから子供を作らないなどということはありません。男女が経済的に自立していて、しかも親子関係が支えられているという上での離婚ですから、ある意味で簡単に離婚ができます。
たとえ事実婚であっても、子供が生まれたとき、その父親は認知をし、届け出なければなりませんから、父親が事実婚にすぎないからと言って逃げてしまうということはありません。子供の権利については児童福祉局が入り、父親探しをします。児童手当金も、まず母親に支払われます。父親が子供を引き取った場合は、当然子供にいくべきお金として母親から父親に回っていきますが、原則として児童手当金は、母親の名で支払われます。
こういった男女平等を支えるシステムがあるから、比較的離婚が容易だし、非婚で子供を生むということもできるわけです。ただ、子供に対する親の責任は厳しく求められるということです。
樋口 そういった社会全体の枠組みを知らずに、偏った情報を日本の伝統的価値観の中で聞くと、フリーセックスだとか、みだらだとかいうことになるんですね。
訓覇 スウェーデンでは、家族というものを「家族集団」「ファミリーサークル的なもの」と、とらえているんです。離れてしまった親子の絆がおざなりにされずに、たとえ継父・継母の家庭一再構成家庭となっても、実の親子の関係はつながっていて、一つのファミリーサークルの中で共存しているということです。もちろん、そこに到るまで、いろいろな考え方があり、葛藤があったわけですが。
樋口 とても大人の社会ですね。日本では、家族のあり方についても、規制が強くないと家族の関係が保てないという人たちがいるんです。日本人の好きな「絆」という言葉は、悪い意味ではありませんが、もともと「引き止める力」、強制的な「絆」という意味合いがあるようですね。

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訓覇 アメリカの家族社会学の学者などは、スウェーデンの家族を、絆が弱い家族だと言うけれど、スウェーデン人に言わせれば、強制的な絆で結びついている家族は、ではつながりが強いのかということになります。強制的なものを取り外したあとで残る、純粋に情緒的な感情の交流としては、スウェーデン人の家族の絆は強いのではないのでしょうか。

 

「公園神話」「自殺神話」の実態

樋口 今おっしゃったことと矛盾するような、第二の神話「公園神話」というのもあります(笑)。「ヨー

 

 

 

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